バイクのエンジンで出力される力をリアタイヤに伝えるための仕組みにはチェーン、ベルト、シャフトドライブの3つの形式のどれかが使われています。
エンジンオイルと同じく、比較してどれが最も優れているのかという話題がしばしば登場しますが、実際はそれぞれにメリット・デメリットが存在しています。
今回の記事では改めて、チェーン、ベルト、シャフトの3つのドライブ形式について、どれが良いかを考えてみます。
- 王道チェーンドライブはパワーロスが少ないがメンテナンス工数が大きい
- ベルトドライブは長距離使えるが、小石などによって裂けると走行が不可能になる
- シャフトドライブ
- 一体、チェーン、ベルト、シャフトのどれがベストだろうか。
- あわせてよみたい
王道チェーンドライブはパワーロスが少ないがメンテナンス工数が大きい
最も一般的なドライブ方式であるチェーンは、スポーツバイク、オフロードバイク、そして一部のクルーザーやツーリングバイクで採用されており、割合としては最も多い形式です。
チェーンドライブは、エンジンから後輪にパワーを伝達する最も効率的な方法であり、伝達時に失われるパワーのわずか3パーセントしかありません。
後にベルトやシャフトについても述べますが、比較してみるとパワーロス率が圧倒的に少ないというのがチェーンのメリットです。
パワーロスが少ないメリットから、短距離のフルパワー走行を行うドラッグレースのマシンや、オフロードバイクでチェーンドライブが採用されているというわけです。
逆に、チェーンの最大の欠点はメンテナンス性が高いことです。すなわち、チェーンの掃除や注油をこまめに行う必要があります。
また、チェーンを交換する際には、スプロケットも交換する必要があるため費用と手間・時間がかかります。
チェーンドライブは、ベルトやシャフトほど静かで滑らかでないこともデメリットとして挙げられます。
さらに、チェーンがリアスプロケットからまっすぐにエンジンへ出入りするように、後輪の位置を正確に調整する必要があります。
ベルトドライブは長距離使えるが、小石などによって裂けると走行が不可能になる
ベルトはチェーンと同じように機能します。
ベルトには繊維が織り込まれているため強度があり、静かかつ滑らかでメンテナンスの必要性が低く、注油の必要がないため、クルーザーによく使われています。
ハーレーダビッドソンのバイクには昔からベルトが採用されていることでも有名ですね。他にもBMWの一部のバイクにもベルトが採用されています。
チェーンは15000km~20000kmごとに交換する必要があると言われていますが、ベルトは25,000~35,000kmごとに交換が目安のため、チェーンより1.5倍~1.8倍ほど長く使うことができます。
高価なケブラーベルトではそれ以上の寿命を持つこともあり、非常に耐久性にすぐれています。
ベルトのデメリットとしては、パワーロスが約11パーセントで、これはチェーンよりも多いです。
チェーンの約4倍もパワーロスがあるので悪いように思いますが、シャフトと比べると少ないため、一概に悪いとは言えないのです。
また、先ほど耐久性が高いということを述べましたが、長寿命であるにもかかわらず、ベルトはチェーンよりも損傷を受けやすいのです。
スプロケットに詰まった小石がベルトに食い込んだりすると、一気にベルトが摩耗して裂けて故障してしまうことがありますが、チェーンではそのようなことは起こりません。
よって、街乗り用途のバイクではベルトが採用されるケースも多いのですが、オフロードバイクではベルトドライブは難しいのです。
チェーンでは、一時的な対応をして家まで走ることが可能な場合もありますが、ベルトが裂けてしまうと、走行は不可能になってしまいます。
シャフトドライブ
究極の低メンテナンスドライブとして、シャフトドライブが挙げられます。
定期的に必要なメンテナンスはフルード交換のみ。すべてをボルトで固定してしまえば、ホイールのアライメントを調整する必要はありません。
致命的な故障が起きてしまった場合は別ですが、シャフトドライブはカバーで守られていることから、小石などによるダメージもほぼなく長く使うことが可能です。
これらの特徴により、ツーリングバイクや一部のクルーザーに人気があります。BMWのバイクは伝統的にシャフトドライブが採用されています。
デメリットとして、エンジンパワーは後輪に届くまでに多くの可動部品を介さなければならないためエンジンパワーの31パーセントがロスしてしまいます。
例えばホンダのVFR1200Fでは、111馬力(PS)のうち77馬力PSほどしか有効に活かすことができないという計算になります。
加えて、シャフトドライブはかなりの重量がかかり、チェーンやベルトと比べるとハンドリングが重くなります。
シャフトドライブのもう一つの大きなデメリットは、トルクが上る点です。ドライブシャフトがリアタイヤを回転させる力で、急加速時にリアが浮き上がってしまう現象が発生します。
これでは、リアのトラクション向上が難しくなってしまいます。
ゴールドウイングのような超重量級のバイクでゆったりとツーリングしているときには気にならないかもしれませんが、スーパースポーツなどのバイクにとって大きなデメリットになってしまいます。
もちろん、リアに発生するトルクが大きくなりすぎないよう制御するような機構が組み込まれるような動きはありますが、デメリットとしては存在しています。
一体、チェーン、ベルト、シャフトのどれがベストだろうか。
チェーン、ベルト、シャフトの3つのドライブのメリット、デメリットを見てきました。ではどのドライブが最も良いと言えるのかを考えてみます。
結論から言うと、最適なドライブは乗るバイクや用途によるということになります。
オフロードバイクでダートコースを走る場合には、前述のメリット・デメリットを考慮するとチェーン以外のドライブはベストとは言えません。
はたまた、馬力に代表されるエンジン出力にこだわらず、舗装路をゆったりと走りたいライダーにとってはベルトもしくはシャフトのどちらかがベストであり、チェーンが最良とは言えないことになります。
ということから、繰り返しになりますがベストなドライブは乗るバイクや用途(走る道や速度、求めるスペック)によって異なるということが結論となりました。
あなたにとって最適なドライブは、どれになりますか?
良い答えが見つかることを祈ります。
あわせてよみたい
さいごまでお読みいただきありがとうございました。
では、また次の記事で。
参照:https://www.rideapart.com/features/489623/ask-rideapart-chain-belt-shaft-drive-better/