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育児まっただ中のSEパスコーが経験したIT・子育てについての経験をお届けするブログ。趣味であるバイクにあまり乗れないことから、欲しい物のレビューを書くことで楽しんでいる。バイク関連がメインコンテンツになりつつあります。

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長時間労働を続けた結果、長期休暇となったSEに学ぶ。価値の提供とは。

会社の業務に限らず学校やサークルなどの習い事のコミュニティーの中で、Aと言えばYさんというような方程式が成立していることがあると思います。

例えば、数学と言えばAさんとか、学級委員と言えばBさん、先輩から過去問を仕入れてくると言えばCさんなどのようなことが該当します。

私の所属先において、あるニッチなアプリケーション"S"を担当しているKさんという同僚エンジニアのお話です。

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ニッチなアプリケーションは担当SEが少ない

ニッチというのは、他社が製品を提供していないスキマのという意味です。

ニッチなアプリケーションS(Sはそのアプリケーションの頭文字)とは、ライバルのいない(少ない)特殊な用途で使われるアプリケーションという意味になります。そのアプリSを担当しているKさん。

ニッチな、というだけあって、顧客企業からの要望は少ないし、導入事例も少ないです。もちろんgoogleで検索しても情報はあまり出てきません。海外のサイトがちらほらひっかかる程度です。

 

要望が少ないということは、SEの数も営業の数も少なくなります。社内社外問わず、アプリSの導入を担当できるSEは非常に少ないのです。私の所属先でも本社・大阪・名古屋・福岡に数名程度しか深く知る人物はいません。

つまり、アプリSの提案が発生する=Kさんが担当するという状況が発生してしまいます。提案に対して顧客企業から発注を受けると、そのまま構築までKさん担当します。

顧客企業内のSEもアプリSを深くを知るSEが少ない場合が多いので、構築して引き渡しとはならず、そのまま保守・運用支援までをKさんが担うことになっていました。

導入には3~5ヶ月程度かかるため、Kさんのリソースを考慮して1年に2件ほどになるように提案自体もコントロールしていました。5年ほどかけて積み上げた実績によって他社からの引き合いが増えてきました。

Kさんの稼働は受注したプロジェクトのサービス提供で次第に埋まってきました。SE部門としては稼働が上がる(=持て余している工数が少ない)というのは喜ばしいことです。

積み上がるアプリSのサポート工数

Kさんがコツコツと積み上げてきた導入実績と、その後のサポート契約

パートナー企業と常駐で1名の支援契約を結び、主としては2名で対応してきましたがサポートだけで月の半分が埋まってきました。次なる活動をしなくても月の半分を賄える受注が常にあるというのはSE部門としては喜ばしいことです。

しかし、新規提案・新規受注が入ってくると、途端に稼働が上がってしまいます。アプリSはKさんたち2名でやるしかありません。

2名体制ですが技術的にはKさんが長けているので、提案と新規構築は主にKさんが引き受けていました。もちろんその間もサポート対応もしていたので、いつしか2人は慢性的な残業で対応せざるをえなくなってしまいました。

目の前の提案や導入をこなし、一段落してホッとするたびに積み上がっていく保守、運用支援の工数。Kさんのスケジュールを見ても空いている時間がみるみる減っていきました。

直近では過労死ラインとされる80時間超の残業をしており、体調を崩して長期休暇に入ってしまいました。

突如として知見のないアプリSの導入とサポートが宙に浮く

Kさんが担っていたアプリSの導入案件、サポート業務が、突然宙ぶらりんになってしまいました。

顧客企業の担当者の方からは心配の声をいただいているのですが、企業間のの契約はもちろん履行せねばならず急遽数名がアサインされ、メーカーへ問い合わせをしたり検証をしながら耐え忍んでいます。(Kさん、どうか元気になって戻ってきてください)

目の前のドタバタは組織ですからなんとか対応するのが当然です。確かに案件数が少ないことから、今までKさんたち2名に任せっきりになってしまっていたことは悔い改めねばなりません。

皆で踏ん張らねばと、そして私が同じように体調を崩さないようにと考えています。

 

Kさんはどんな思いで耐えてきたのだろう。もっと早く手を打てばこういった事態を防ぐことは出来たのではないだろうかという思いがあり、休暇に入る前日に会話した際に聞いてみることにしました。

アプリSを対応できるSEが自分しか居ないことが存在価値と思っていた

Kさんに訪ねた結果、得た返答。

アプリSを対応できるSEが自分しか居ない、すなわちKさんに頼らざるをえない=Kさんの存在意義と考えていたとのことでした。

この自分しか出来ないことが価値と考える思考はSEの世界に限らず、どの分野や職種においても見受けられる思考ですし、私自身も自分の力を過信してこのように思っていた時がありました。

 

そのため、どんどん増えてくる案件が、実はもう量的にも限界だということが分かっていたにも関わらずKさんは残業をして対応するという方針をとっていたようです。

もちろん、三六協定もあるし日々が体力的にもキツイので増員してほしいという打診は多少していたようですが、Kさん自身と同じスキルレベルのSEが生まれることを望んでいなかった部分があるようでした。

気持ちはわからないではないけれど、この思考は組織としても個人としても良くありません。どう良くないのかをもう少し掘り下げてみることにします。

改善点1:全ての工程が価値が高いわけではない。解像度をあげて分解が必要だ

にっちなアプリSは対応できるSEが市場に少なく、顧客企業内にも長けたスキルを持つSEが居ないケースが多いため、お金をもらって責任を持って対応できるSEである時点で価値があると言えます。

まずは顧客にヒアリングを行い、要件を定義して・・・とすすめ、打ち合わせ結果から設定値を決めてパラメータシートに作成し、アプリSをサーバーにインストールしていきます。

パラメータシートを手に、複数台のサーバーにインストールして設定を行い、動作確認していくという部分はある程度定型的な作業だったのです。手順を整理して、手順書を作成して教育を施せば他の人に委ねることが出来る部分です。

客観的な立場から言うなれば定型的な作業なのです。定形作業自体は要件定義や設計などの思考が主体となる工程と比べると価値が高くない部分なのです。

アプリSの導入という1まとまりでは価値は高いのですが、解像度を上げて見た時に(相対的に)価値高くないインストールなどの作業部分は、存在意義には繋がらないので切り出しても良かったのではないかと考えられます。

改善点2:繰り返し行う、一定の結果を求める作業は手を離す努力をすべし

1で書いたインストールや設定、動作確認の作業も決して数時間で終わるものではありません。1つの案件においても数週間程度かかります。

時間をかけてでも、誰かに引き継ぐことができれば数週間の時間を生み出すことができていたのではないでしょうか。

10回やれば8、9回以上はすんなり終わるであろう作業を自分自身が抱え続けるというのは望ましいことではないと考えられます。

仮にこの作業を1年に2回、実施すると考えても数週間×2なので1.5ヶ月~2ヶ月は時間を生み出すことができるはずです。

1.5ヶ月分、(相対的に)価値の高い要件定義や設計工程の対応をすることができればKさん自身も更に経験を積むことができてSEとして成長できることはもちろん、組織としても3件目の案件対応ができることになるので嬉しい話になります。

Kさん自身が調整しなかったことに加えて、組織的にこういった対応ができていなかったことは今回の反省点です。

10回やって8回以上は難なくクリアできることは手を離す努力をすることが重要です。

改善点3:長時間労働で埋めることを検討した時点で第3者の意見をもらうべし

プリセールスSEとしての提案、そしてアプリSの導入サービス提供をするSEとしての活動、アプリSの保守や運用支援SEとしての活動を長時間労働という、労働集約型の対応をしたことによってKさんは健康を害してしまった。

こうなる前のKさんは、仕事が早く終わった日にはカフェで英語の勉強をしたり、トヨタ式の資料まとめ方の書籍を読んだりと生き生きと楽しそうに過ごしていたのですが、長時間労働により時間を失った。

もちろん、英語の勉強も書籍を読むこともできなくなったと言っていたし、毎日の睡眠時間も少ないので日中にウトウトしてしまったり午前中は思考が進まないと言っていたりした。

業務時間中の生産性が落ちるからタスクは進まなくなり、タスクをこなすために労働時間でカバーする。しかし考慮不足などでミスが発生し、またタスクが増える。そのタスクをこなすためにまた時間を・・・・・

こうなってしまうと長時間労働の罠にすっぽりハマってしまった状態です。抜け出すためには誰かの力を借りることが望ましいと考えると思いますがKさんはこれこそ存在意義として考えてしまっていたところにミスがあった。

長時間労働で穴を埋める働き方になった時点で第3者の介入が必要だった。

 

Kさんの残したアプリS導入案件にアサインされた

そもそも、こんな記事を書いている時点でお気付きのことだとは思うのですが、Kさんの残したアプリS導入の2案件にアサインされました。

1つはアプリSの新規導入案件で、もう1つはアプリS導入中の案件で、炎上、もとい、大きく改善が求められている案件へのヘルプ参加。

アプリSについての技術的な知識や経験は足りているとはとても言えないものの、Kさんから学ばせてもらった3つの要素を取り入れながら対応を進めています。

 

炎上大きく改善が必要な方の案件は、1週間強だけの作業管理の意味で引き受けたのだが、いざ行ってみるとPMがSEとして作業してしまっている状況を目にしてしまったため当面常駐だなと腹をくくりました。

取り急ぎ、私が外からきた第3者目線を持っている内に、と次のことにについて調整し立て直そうとしています。

  • 私より先にPJ参画していて疲労蓄積しているメンバーのタスクをへらす
  • 社内で工数の空いているメンバーの洗い出しとスケジュール確保
  • アプリSに長けた協力会社のSE増員
  • PMが実施しているSE作業の明確化と私への引き継ぎ
  • 顧客担当者との会話の内、技術的なものは私へスライド
  • PMがマネジメントタスクに集中する時間の捻出
  • 私がスキル不足、リソース不足で引き受けられないタスクの洗い出し
  • タスクの再配置

目の前の課題を解決し、楽しくポジティブに仕事ができる環境を皆に取り戻すために活動を続けていきます。

 

顧客企業内のシステム不具合などで大きく遅延するという引きの強い案件で、すでに3週間ほどの遅延が発生している状況で、今のところ年末までか、1月末ぐらいまで対応にかかりそうです。

私を含めて、自社と顧客のPJ関係者みんなが長時間労働によってつらい思いをしないで良いように協力して進めていこうと考えております。

 

私も頑張ろうと思いますので、長時間労働をしていたり、個人商店化状態で辛い状況の読者の皆さまが改善するためにお役立ちできれば幸いです。

 

 

では、また次の記事で!

 

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